「おんちょろきょう」とは?
「ねずみ経」という名前で各地で昔から伝わるお話です。
むか~し、むかしのお話。
[著作:木暮正夫]
お爺さんに先立たれたお婆さんは、
毎日仏さまを拝んでいたが、お経を知らなんだ。
ある晩、道に迷った小僧さんが「一晩、泊めて欲しい。」
と訪ねて来られた。
お婆さんは、「お経をひとつ教えて欲しいんじゃが。」
と泊めてあげたそうな。
実は、この小憎さんはお経をまだ知らなんだんじゃ。
手を合わせてお経を待つお婆さんを前に困った小僧さん。
すると、部屋の隅にちょろちょろ動くネズミを見つけ、
「おんちょろちょろ出て来られそうろう」
お婆さんも後から続いて
「おんちょろちょろ出て来られそうろう」
別のネズミが穴からのぞいてきたら
「おんちょろちょろ穴のぞきそうろう」
後から続くお婆さん。
「おんちょろちょろ…」
とその後も続けて、
「なにやらふにゃふにゃ話されそうろう」
「隠れてそうろう」
「また出てきてそうろう」
「そのまま帰られそうろう」
チーン!
お婆さんは大喜びで、毎日毎日そのお経を唱えたと。
ある晩、お婆さんの家に2人の泥棒が入ってきた。
そうとは知らぬお婆さんは、いつものようにお経を唱えておった。
「おんちょろちょろ出て来られそうろう」
「なんじゃ!?」
「穴のぞきそうろう」
「ふにゃふにゃ話されそうろう」
「隠れてそうろう」
泥棒は自分の動きを見ているかの様なお経に驚き、
何も取らずそそくさと逃げたとさ。
「おんちょろちょろそのまま帰られそうろう」
おしまい